コラム

腸内フローラと腸内洗浄

腸内に溜まった古い便や老廃物、腸内ガスを排出する即効性のある方法として、医療機関で行う腸内洗浄があります。清潔な微温湯を大腸の奥まで送り、自分が本来持っている大腸のぜん動運動と直腸の排便反射を使い、大腸内の老廃物や腸内ガスを体外に排出する療法のことです。

 

>腸内洗浄とは

 

ここで、腸内洗浄を受けに来られた方から、「腸内洗浄で腸を洗い流したら、腸内にいる善玉菌も一緒に流れ出てしまい、腸に悪影響をおよぼすのではないか?」と質問されることがとても多いです。

 

結論から言うと、「薬剤が一切入っていない微温湯で腸内洗浄を行った場合、腸内の善玉菌がいなくなることはありません」

「腸内細菌は、簡単には洗い流されない」のです。

 

今回は腸内環境を整えるという観点から、腸内フローラと腸内洗浄の関係についてお話します。

 

 

<目次>

腸内フローラとは

腸内細菌のバランスが乱れる原因

腸内細菌のバランスを整える生活習慣

腸内洗浄しても腸内の善玉菌はいなくならない

 

腸内フローラとは

腸の中に住む腸内細菌

人の腸内には、約1,000種類、500~1,000兆個、重さにして約1.5kgの多種多様の腸内細菌が住んでいます。腸内細菌は種類ごとに群れをつくって腸壁にへばり付いています。

 

フローラ(flora)とは、英語のお花畑の意味。顕微鏡で腸内をのぞくと、多種多様な腸内細菌の群れが、まるでお花畑のように見えることから、腸の中の腸内細菌の様相を「腸内フローラ」と呼んでいます。腸内細菌が生息している場所は、小腸の終わり付近(回腸)と大腸全体です。

 

腸内細菌は臓器のひとつ!

腸内には多種多様の腸内細菌が生息していますが、一般的に善玉菌・悪玉菌・日和見菌に大別され、その割合は善玉菌:悪玉菌:日和見菌が2:1:7を言われています。

 

善玉菌の代表格にはビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌など、悪玉菌の代表格にはウェルシュ、病原性大腸菌、ブドウ球菌など、日和見菌には連鎖球菌、大腸菌、バクテロイデスなどが知られています。

 

その中でも、特に人の健康の役に立つ腸内細菌をプロバイオティクスと呼んでいます。代表的なプロバイオティクスには、ビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌などがあります。

 

人の健康によい代表的な腸内細菌ベスト3

ビフィズス菌

哺乳類の腸管の中、特に乳児の腸内に多くに生息している菌で、糖を分解し乳酸と酢酸、短鎖脂肪酸を作り出しています。ビフィズス菌は嫌気性菌に属しており、酸素のない場所でしか生きることができません。

 

腸内を酸性に傾ける整腸作用(腸内の有害菌や有害物質を減らす)腸内環境を改善し、腸のぜん動運動を促し便通を促します。

 

免疫を高め感染防御、発ガン抑制、アレルギー症状の改善などの作用があります。ビタミンB群を作ったり、消化吸収を助ける働きもしています。また、死菌は腸内の善玉菌のエサになり善玉菌を増やします。

 

乳酸菌(乳酸桿菌・乳酸球菌)

哺乳類の腸の中や食品の中にもいる菌で、糖を分解し乳酸と酢酸を作りだしています。乳酸菌は好気性菌に属しており、酸素のある場所でも生きることができます。

 

乳酸菌もビフィズス菌と同じく腸内を酸性に傾ける整腸作用、便通を促す、免疫を高め感染防御、発ガン抑制、アレルギー症状の改善、ビタミンB群合成などの作用があります。また、死菌は腸内の善玉菌のエサになり善玉菌を増やします。

 

酪酸菌

食物繊維や糖を分解し酪酸を作り出しています。酪酸は短鎖脂肪酸のひとつで、腸内を酸性に保ち、悪玉菌の繁殖を防いだり乳酸菌の働きを助けたりします。

 

酪酸のほかにも酢酸やプロピオン酸などを作り出しています。酪酸菌は嫌気性菌に属しており、酸素のない場所でしか生きることができません。

 

脂肪の蓄積を防ぎ肥満を予防する、腸の炎症を抑える、大腸の粘膜にエネルギーを提供し、腸のぜん動運動を促進する、がん化細胞増殖の抑制、腸壁を覆う粘液物質(ムチン)の分泌促進、などの働きが分かっています。

また、ビフィズス菌、乳酸菌を増やす環境をつくります。

 

腸内細菌フローラが乱れる原因

生活習慣の乱れ

食事

肉中心の食事、食物繊維不足、不規則な食習慣が続くと、腸内に住んでいる善玉の腸内細菌のエサが少なくなります。

 

その結果、腸内の悪玉菌が増え善玉菌が減り、腸内が汚れてしまいます。腸内フローラが乱れる原因となります。

 

夜更かしや睡眠不足

腸の動きは自律神経の副交感神経がコントロールしています。自律神経は内臓の働きや代謝、体温などのなど生きるために必要な機能を司っており、「交感神経」と「副交感神経」の2種類があります。

 

自律神経は、私たちの意思とは関係なく24時間自動的に働いており、生体リズムをコントロールしています。

 

交感神経は、別名「エサ取り神経」と呼ばれており、日中活動しているときや興奮したり緊張したりしているときに活発になります。副交感神経は、夜間やリラックスしているときに活発になります。

 

胃腸の動きは副交感神経が働くことで活発になるため、夜中まで起きていることで自律神経の働きが乱れ胃腸の働きに悪影響を及ぼします。

 

便秘や下痢

体内の毒素の約75%は便から排出されるといわれています。便秘とは、「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」。

 

便秘になると腸内に老廃物が停滞して、腸内の悪玉菌が増え、腸内フローラが乱れる原因になります。

 

また、下痢は腸の内容物が出すぎる状態で、慢性的な下痢は便と一緒に腸内の善玉菌も排出されるため、腸内フローラが乱れる原因になります。

 

過度なストレス

腸の動きや働きは自律神経によって調整されています。過度なストレスにより自律神経の交感神経が優位になると、腸の動きが悪くなり便秘の原因になり腸内フローラの乱れの原因となります。

 

過度なストレスによって副交感神経が優位になることがあり、過敏性腸症候群(IBS)のような症状が起こります。過敏性腸症候群には、便秘型、下痢型、便秘と下痢を交互に起こす型、分類不明型の4型があり、いずれも腸内フローラを乱す原因となります。

 

また、ストレスそのものが腸内フローラに直接悪影響を与えていることが、古くから知られています。

 

抗菌剤・抗生物質などの服用

感染症などの治療に用いられる抗生物質や抗菌剤の服用により、腸内に住んでいる有益な腸内細菌も殺されてしまい、その結果、悪玉菌や日和見菌が増えすぎて腸内フローラが乱れる原因となります。

 

加齢

腸内の善玉菌の代表格であるビフィズス菌は、乳児の腸の中では90%以上を占めるといわれています。しかし、3~4歳ごろから徐々に減りはじめ、成人期では10%以下に、更に老年期では1%以下に減少するといわれています。

 

腸内フローラを整える生活習慣

腸内フローラは変えられる!

つい最近まで、「腸内細菌のバランスは個人が持って生まれたものであり、後天的に菌の構成が変化することはない」、と考えられてきました。

 

しかし、近年、DNA抽出・RNA遺伝子の配列データを用いるメタゲノム解析を用いて菌叢組成の解析を行うことが可能となり、食事によって腸内にいる善玉の腸内細菌を増やすことができることが解明されてきました。

 

また、日本人は難消化性の炭水化物をエサにする腸内細菌が多いという研究結果も出ています。自分の努力次第で腸内フローラを整えてキレイな腸を作ることはできるのです!

 

食事

栄養バランスよく食べる

キレイな腸とは、多種多様の腸内細菌が住みている腸だといわれています。

 

腸内細菌の多様性を高めるためには、炭水化物・たんぱく質・食物繊維・脂質・ビタミンミネラルなど、栄養バランスよく食事を摂ることが大切です。

 

食物繊維を食べる

不溶性および水様性食物繊維:野菜、豆類、未精製の穀物、果物、ココアなど

 

難消化でんぷん:冷ご飯、穀類、いも類、豆類など

 

難消化オリゴ糖:フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラフィノースなど

 

発酵食品を食べる

食物に含まれる糖を微生物が分解することによってできた食品のことで、腸内フローラを整えることが分かっています。

 

調味料・嗜好品:みそ、しょうゆ、酢(穀物酢・りんご酢など)、酒粕、麹甘酒、日本酒など

 

動物性発酵食品:乳製品(ヨーグルト、チーズ、サワークリームなど)、イカの塩辛、カツオ節、アンチョビ、くさや、など

 

植物性発酵食品:納豆、ぬか漬け、塩漬け、ピクルス、キムチ、テンペなど

シンバイオティクスを摂る

 

プロバイオティクス

腸内フローラのバランスを改善することにより、人に有益な作用をもたらす生きた微生物のことです。1989年にイギリスの微生物学者であるFullerにより提唱されました。

 

代表的なプロバイオティクスには、ビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌、納豆菌などがあります。中でもビフィズス菌は食物の中には入っていません(高生存ビフィズス菌を入れてあるヨーグルトはある)。

 

また、ビフィズス菌は年齢とともに減ってくるため、サプリメントで摂ることもおすすめです。

 

プレバイオティクス

腸内の善玉菌の栄養源となり、それらの増やすことで人健康増進に役立つ食品のことです。

 

オリゴ糖(ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルオリゴ糖など)、食物繊維(ポリデキストロース、イヌリン)など。

 

シンバイオティクス

プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせ、一緒に摂取することです。

 

腸内フローラを改善する有益菌(プロバイオティクス)を生きたまま腸に届け、これらに栄養を与える餌(プレバイオティクス)も一緒に摂取することにより、お互いの機能の相乗効果が発揮されるという考え方が、広く受け入れられるようになりました。

 

運動

運動が腸内細菌の構成を変化させ,有益な代謝系をもつ腸内細菌叢に変化させることが研究によりわかってきています。1日30分程度の適度な運動を心がけましょう。

 

普段の生活の中で運動量を増やす

一駅前で電車を降りて、家まで歩く。

エレベーターを使わず階段を使う。

通勤途中では速足で歩く。

ランチはあえて遠くのお店に行く。

家のそうじの時、床の雑巾がけをする。

 

家でできる運動

テレビをみながらストレッチをする。

寝る前に腹式呼吸法やドローイング呼吸法をする。

ラジオ体操をする。

 

休養

リラックス

好きなことをする時間をつくる。

ゆっくりとぬるめの湯船につかる。

アロマなど、好きなにおいを嗅ぐ。

夜更かしをしない。夜はしっかり寝る

 

腸内洗浄をしても腸内の善玉菌はいなくならない

腸内細菌は簡単に洗い流されない

確かに、腸内細菌のバランスがとてもよく腸内環境が整っている人が腸内洗浄をすると、一時的に腸内細菌の総数が減るといった現象がおこります。

 

しかし、腸内細菌は腸の壁にある粘液層の中に、苔のようにへばりついて生息しています。そしてそれは洗浄しただけで簡単に取れるようなものではありません。

 

腸内細菌の流され方は洗浄法で変わる

腸内洗浄をすることでどれだけ腸内細菌が洗い流されるかは、どのような腸内洗浄の方法を選ぶかで変わってきます。

 

大腸内視鏡検査の前処置

大腸内視鏡検査は腸壁の様子を細かく観察する必要があるため、大腸内の内容物を全て出し切る必要があります。

 

そのために複数の下剤を飲用して、腸の内容物を排泄させます。それにより、腸内にいる多くの腸内細菌は流れ出てしまうでしょう。その場合でも、約1週間で腸内細菌は元の数に増えると言われています。

 

微温湯を使う腸内洗浄

微温湯を大腸内に送りこみ腸を洗浄する場合は、腸内に滞留している便を排出する程度で終わることが多く、腸壁にへばりついている粘液層や腸内細菌を、すべて洗い流す可能性は低いといえます。

 

腸内細菌は数日で元の状態に戻る

そして、腸内細菌はおおよそ3日間ほどで、元の数に増えるといわれています。また、腸内洗浄で腸内を洗い流したとしても、腸内細菌の構成バランスは大きく変化することはありません

 

腸内洗浄によって、洗い流す必要はない善玉の腸内細菌が洗い流されたとしても、数日で元の状態にもどるため、腸内に悪影響をおよぼす可能性は低いといえます。

 

もともと「快便快腸でお腹もペタンコ」、「おならや便も臭いない」、「いつも排便後にスッキリ感がある」といった腸内環境が整っている方が、わざわざ腸内洗浄をする必要はないのかもしれません。

しかし、当院にいらっしゃる方には、便秘の自覚はないけれど、お腹が張る・排便後にスッキリ感がない・排便してもお腹が重い・排便してもお腹がへこまないなど、“かくれ便秘”の方が多く見受けられます。

 

そして、そういった方は自分の腸の状態がなんとなく気になっています。また、腸内洗浄を受けにきた方のほとんどが腸の中に古い便が溜まっている、いわゆる「腸内の悪玉菌が多い状態」です。

 

おならや便が臭い人は、腸内洗浄をする価値あり!

医療機関で行われる「薬剤を一切使用していない」「仰向けに寝た状態で排出ホースを通して排便を試みる」といった腸内洗浄の利点は、腸内環境のリセットと結腸や直腸反射のトレーニングができることです。

 

腸になんらかの不調を感じている方にとっては、腸内洗浄をして腸内の善玉菌が洗い流されるデメリットより、腸内の悪玉菌が洗い流されるメリットのほうが、はるかに大きいといえるでしょう。

 

おならや便が臭い、お腹が張る、排便後にスッキリ感がないなどのお悩みがある方は、ぜひ当院の腸内洗浄で腸内をリセットしてみてはいかがでしょうか?

このコラムの執筆者

齊藤 早苗(サイトウ サナエ) コロンハイドロセラピスト・看護師・インナー美人アドバイザ-

看護師として大学病院などに勤務後、2000年に米国で腸内洗浄(コロンハイドロセラピー)の研修を受け、国際ライセンスを取得。
21,000人以上のガンコな便秘やぽっこりお腹に悩む女性に腸内洗浄を施しながら腸ヘルスケアの指導を行う。また、腸の健康推進や腸もみマッサージ指導などの啓発活動として、セミナーや講演、雑誌、TV、WEBなどのメディア取材にも応じる。日経ヘルスにて連載した「おなかのきもち」は8年間の長期連載を記録。
著書:美女になる腸トレ、美腸やせなど多数。早稲田大学卒業。「便秘による心身症状の認知行動療法」を研究中、日本心身医学会にて原著論文採択。コロンハイドロセラピスト歴21年、健康カウンセラー歴18年 。

・国際コロンハイドロセラピー協会会員
・日本心身医学会会員
・日本心理学会会員

齊藤早苗公式サイト https://www.saito-sanae.com/

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