お腹がゆるい、軟便や下痢について
病的な原因がないにもかかわらず、「軟便・下痢」になりやすい方も多いのではないでしょうか?
「便が出ない便秘の状態より、出すぎるくらいの方がよいのではないか」「1日に何回もゆるい便が出でいる人は、腸の中がキレイだ」と思い込んでいる方がとても多いです。
しかし、便が何回も出ていつもお腹に不快感がある場合は、「便秘の状態」と同じくらい腸の中が汚れています。
今回は腸内環境を整えるという観点から、軟便や下痢の原因と対処法についてお話いたします。
軟便・下痢とはどんな状態?
軟便・下痢の原因
軟便・下痢の症状
軟便・下痢の対処法
軟便・下痢になりにくい腸をつくるには
軟便・下痢とはどんな状態?
下痢とは、何らかの原因で便の水分量が増えて、1日3回以上の軟便や水様の排便がある状態のことです。
大腸の中で便はこうして作られる!
口から食べた食物は約5~6時間で小腸から大腸に運ばれます。大腸の奥に位置する上行結腸では、まだ食べ物カスと水分が混じった状態です。
結腸の分節運動を繰り返しながら水分の吸収が行われ、食後8時間頃には横行結腸で泥状になります。食後12時間ころには下行結腸に移動して半固形状となります。
食後24~72時間でS状結腸に溜まった便が、肛門から排泄されます。
健康的な便はバナナ状で、便に含まれる水分量は70~80%と言われています。
便に含まれる水分量が80%以上になると便が泥状にゆるくなり(軟便)、90%以上になると水様となり下痢の状態になります。
下痢を起こす腸の3つ機能低下
腸のぜん動運動
腸は分節運動やぜん動運動で食べ物を移動させていますが、何らかの原因で腸管の動きが高まりすぎることで、内容物の水分吸収が不十分となり下痢になります(ぜん動運動性下痢)。
腸管からの水分吸収
腸は腸管の細胞からの水分吸収を行っていますが、吸収力の低下により下痢になります(浸透圧性下痢)。
腸管からの水分分泌
腸の炎症などの刺激に反応して、腸管内に水分や消化液が過剰分泌されることにより、下痢になります(分泌性下痢)。
軟便・下痢の原因
下痢には、突然発症する急性下痢症と、1か月以上持続する慢性下痢症の2つがあります。
急性下痢症
食べ過ぎ飲み過ぎによる下痢(運動亢進性下痢)
一度にたくさん食べ過ぎると、小腸で消化不良を起こし下痢になります。
また、アルコールの飲みすぎると、小腸での水分吸収が滞るだけでなく、大腸のぜん動運動が過剰になり下痢になります。
ストレス性の下痢(運動亢進性下痢)
精神的ストレスにより、自律神経のバランスが乱れ、腸のぜん動運動が活発になり過ぎて下痢になります。
細菌性・ウイルスなどの感染による下痢(分泌性下痢)
サルモネラ菌、コレラ菌、赤痢菌、黄色ブドウ球菌、腸管出血性大腸菌などの細菌性腸炎や、ノロウイルス、ロタウイルスなどによるウイルス性胃腸炎などがあります。
病原性の細菌やウイルスが消化管内で増殖することで、消化管粘膜の分泌が異常に増えて腸粘膜を刺激し下痢になります。
大量の水下痢がみられ、絶食しても消失しないのが特徴です。
薬剤による下痢
抗生物質、抗炎症剤、解熱鎮痛薬、下剤、消化管機能調整薬、プロスタグランディン製剤など、薬剤の成分が腸粘膜を刺激して下痢になります。
ソルビトール、ラクツロースなど、吸収されにくい多量の高浸透圧性物質が、水分を腸管内に引き込むため下痢(浸透圧性下痢)になります。
乳糖不耐症の方にみられる下痢です。絶食により改善するのが特徴です。
慢性下痢症
食物アレルギーによる下痢(分泌性下痢)
リーキーガット症候群※など、食物(主にたんぱく質)を体の免疫機能が異物と認識し、腸粘膜から腸液などの分泌が過剰に行われることで下痢になります。
※リーキーガット症候群
小腸の粘膜細胞の障害により機能が低下し、腸内にある未消化の食べ物など体内に取り込まれることで食物アレルギーを起こしやすい状態となります。
過敏性腸症候群(運動亢進性下痢)
ストレスや腸の形状異常により、腸に病気がないにも関わらす、繰り返す腹痛や下痢や便秘などが繰り返し起こります。
軟便・下痢の対処法
休養
食事を控えて消化管を休ませる
1~2日の絶食をおこない、消化管を休ませることで、消化機能が回復します。
また、下痢をすることで体力が低下するため、安静に休養することで生体機能が回復します。
腹部を温める
ホットパック・使い捨てカイロ・腹巻などでお腹を温めることにより、胃腸の機能が回復します。
お腹を直接温める他に、おへその裏側に当たる腰部を温めることも効果的です。
食事
水と電解質の補給
下痢になると大量の水分が腸から排泄されます。脱水防止のために、水分やアルカリイオン飲料など温めて、少しずつ補給しましょう。
回復期には消化のよい食物を食べる
消化がよく刺激の少ない食事を、少しずつ食べましょう。梅粥や薄味の具なしみそ汁などがおすすめです。
ゆっくりよく噛んでたべましょう。
腹5分目から始め、お腹の様子をみながら徐々に食事量を増やしていきましょう。
タンパク質は、茶わん蒸しや豆腐、白身魚、鶏肉などから食べはじめましょう。
脂肪の多い食品、動物性タンパク質、アルコール、玄米や食物繊維を控えましょう。
腸内環境を整える
プロバイオティクスや、プレバイオティクスを摂る
ビフィズス菌・乳酸菌・酪酸菌などを積極的に補給しましょう。
医療機関の受診
受診の目安
・発熱や嘔吐を伴う下痢
・激しい腹痛を伴う下痢
・3日以上を続く下痢
・便に血が混じる
・脱水症状がある
などの場合は、胃腸科や消化器科の医療機関を受診しましょう。
軟便・下痢になりにくい腸をつくるには
ここまで、医学的な下痢のタイプや対処法などをご紹介してきました。当院の腸内洗浄には、検査をしても特に腸に異常がないのに、「慢性的にお腹がゆるい」、「下痢をしやすい」方が多く見受けられます。
慢性的な軟便や下痢によって、慢性的な腹部不快、お腹の張り、外出先でのトイレの不安など、「生活の質(quality of Life)が低下している」と感じている方が意外にも多いのです。
お腹がゆるい来院者の特徴
当院には便秘だけでなく、軟便や下痢に悩んでいる方も腸内洗浄を受けに来られます。
来院者の特徴
・子供の頃から何かあるとすぐに下痢をする
・慢性的にお腹がゆるい
・受診して検査をしても異常ないと診断される
・腸が下がっている(下痢と便秘を繰り返す)
・腸内にガスが溜まっている
・腸内洗浄時の大腸の動きが弱い
当院の腸内洗浄に来院する方のほとんどが、大腸の動きが弱いタイプです。
来院者の軟便や下痢の原因
・食事時間が不規則で下痢になる:夜遅い時間に食べ過ぎる、長時間の空腹の後に一気に食べ過ぎるなど
・特定の食物をきっかけに下痢になる:脂っぽい物、辛いもの、酸っぱいもの、生ものなど
・食物繊維不足で下痢になる:穀物や炭水化物、野菜などの摂取量が少ない
・お腹が冷えて下痢になる:冷たい飲み物、冷たい食べ物、寝冷えなど
・ストレスによって下痢になる:極度な緊張、不安や恐れなど
軟便・下痢と腸内洗浄
一言でお腹がゆるい・軟便・下痢といっても原因は人それぞれです。受診しても異常がない、慢性的に大腸の機能が低下しているいわゆる下痢体質の方は、腸内の善玉菌を増やし、腸内フローラを整えることが有効です。
動きの弱い腸を整える方法のひとつとして、腸内洗浄も有効です。
腸内洗浄は、お腹を温めながら大腸のぜん動運動を促し、腸内の老廃物やガスを排出する効果があります。
また、最近、腸内細菌移植といった新しい治療法が注目されていますが、その方法として一度大腸を洗浄し腸内をリセットしてから、腸内細菌を大腸に移植するといった方法が実施されています。
上記の観点から、下痢体質の場合も一度腸内洗浄で腸内をリセットし、シンバイオティクスも併用しながら、腸ケアに取り組むことが有効であると私は考えています。
参考
齊藤早苗, 嶋大樹, 富田望, 対馬ルリ子, 熊野宏昭 2020『便秘を自覚する成人女性における体験の回避が腹痛および腹満感の頻度に及ぼす影響』(最終閲覧日:2020年11月18日)